仮処分では仮に給料の支払いをみとめられても仮の復職は認められない
仮処分とは
解雇無効の仮処の分流れ
仮処分においては、労働者は仮処分申し立てをして、主張をするわけですが(文書で提出)裏付けとして疎明資料を提出します。
疎明資料とは一応主張が認められるだろうとする資料で証拠より厳格でないものでも良いとされていますが、実際は訴訟や労働審判に提出する予定の証拠を提出します。解雇事件の場合は審尋期日3回で概ね終了しますので申立て時に出来るだけ沢山の疎明資料を提出する必要があります。
審尋が終了るすと訴訟の判決にあたる仮処分命令が出ます。
仮処分では労働者(債権者)・会社(債務者)の審尋手続きが行われます。解雇無効仮処分は、「仮の地位を定める仮処分」ですから、原則として、口頭弁論または会社(債務者)が立ち会うことのできる審尋期日を経なければ命じることができないので(民事保全法23条4項)、審尋手続は必ず開かれます。解雇無効の仮処分は、仮差押などの一般民事事件の場合と異なり、高額の保証金の準備は不要です。
仮処分は期間が短いので準備が重要
解雇無効の仮処分においては、審尋が3回期間は申し立てから2か月~4か月で終了することが一般的で提出書類は証拠よりゆるい疎明資料も裁判官の判断材料になりますので会社より強い疎明資料(証拠)の提出が重要になります。また、生活が困る主張は労働者側に立証責任がありますから給与明細や生活費にかかるお金の資料をできるだけ準備する必要があります。裁判所は「保全の必要性」について、その労働者が本当に生活に困るのかどうかを厳格に考える傾向があるようなので、申立に際しては生活実態を裁判官に理解させる必要があります。また、賃金の仮払い期間は1年程度に限るとする傾向があるので、裁判期間が長くなる場合は期限到来前に更に仮処分申立をして対応することになります。
裁判官は和解がお好き
民法には「私的自治の原則」があり実際には守らなくてもいい規定がほとんどです。人と人との約束を守る事で世の中の秩序が出来上がります。しかし人間は約束をまもらなかったり、約束の解釈がそれぞれ異なったりしてトラブルが起こるわけでが、当事者や周りの人たちなどの協力でも解決しない場合に裁判所に訴えるわけです。裁判官もまずは「私的自治の原則」によって解決を図ろうと試みます。それが裁判上の調停です。仮処分でも訴訟でも判決など裁判官が判断を下す前に試みられます。労働問題も元々法律問題ではなく、当事者同士が結んだ労働契約という契約名前の契約から発生したものですから裁判官が私が仲介しますのでまず話し合いで解決しませんか?というのもうなづけます。仮処分や訴訟などの1回目に「裁判官から和解は検討しますか?」と必ず聞かれます。途中の審尋や期日の際にも裁判官から和解することを促すニュアンスの話が出たり、裁判官も心証(どのような判断をする気持ちなのか)を開示して双方に判断材料を提示して和解を促すこともあります。頑なで和解の難しいと思われる事件でも一定の審尋期日を経る中で和解に至る場合も多くあります。
仮処分で勝っても地位保全は認められにくい
仮処分で地位保全を申立てるのですが、地位保全は認められにくい現状があります。ちょっとわかりにくいのですが。労働契約上の地位を仮に認めるわけですが、何を認めるのでしょうか?少し考えてみましょう。会社で働いていた状況を仮に元に戻すこととは言えますが、労働者が会社で働くことは労働者の義務,逆に言えば「賃金を支払義務を果たした上で労働者を働かせる事は会社の権利」ですから労働者から義務の履行を訴える事はできません。会社に「働かせろと」訴えることはできないのです。では、労働者の権利をお話すると、
1.賃金を受け取る権利
2.賞与を受け取る権利(ボーナスがある会社の場合)
3.会社の健康保険に加入する権利
4.会社の厚生年金に加入する権利
5.会社の福利厚生を受ける権利
ではないでしょうか。
仮処分で認められるのはこれらの権利の中で権利が認められないと生活に困るものに限られます。まずその中の、
3.会社の健康保険に加入する権利、
4.会社の厚生年金に加入する権利
5.他の会社福利厚生受ける権利
については訴訟や労働審判の終了まで代替えの国民健康保険や厚生年金などの制度が整備されていることから、認められないとの判断になります。5.他の会社福利厚生受ける権利は特にその権利を受けなくても生活に困らないと判断されてしまいます。
地位保全には1.賃金を受け取る権利・2.賞与を受け取る権利も含まれていると考えられると思いますが、実務的に地位を保全することと、金銭の債権債務は別問題と考えられていますので、金銭債権が明らかになっていないので差押が出来ない事態になります。ですから実務上、地位保全とは別に雇無効による賃金請求権として請求する必要があります。
まとめ
仮処分の申し立てでは労働契約上の地位保全と賃金請求権を分けて申し立てします。しかし、仮処分の申立てで認められるのは本裁判終了までの生活に困らない程度のお金ということのなります。仮処分の給料支払いが認められても従業員としての地位は認めらないとする裁判所の判断が仮処分でなされます。仮処分ではいかに金額を減らされないか。という事が重要になってきますので事前の準備が重要となります。
以上わたしの解釈によってつらつらと書きましたが、ぜひご意見をいただきたいと思います。