十分証拠を持っていながら労働審判を利用した場合、白黒をつけるための審理が行われると思いがちだが、実際は1回目から調停が試みられるため、労働者が請求する金額に全く及ばない金額での調停案が出される場合が多い。通常、労働者からの申立てがほとんどなので、弁護士に進められ、解雇され初めて労働審判で証拠などを元に審理されると思うが、そうではないです。裁判官にも弁護士にも提示された金額で和解するよう強く勧められ、渋々承諾して不満な幕切れになる方が何人もいました。
労働審判とはそんなものだと思っておいてください。
訴えの提起(民事裁判の始まり)
民事裁判は、訴えを起こす人(原告:げんこく)が裁判所に訴状(そじょう)を被告本社・本店を管轄する裁判所に提出しますが、原告と被告の管轄裁判所が異なる場合、管轄違いで移送される可能性が高いですが、原告の管轄裁判所にも訴状を提出することも可能です。原告は正副2部の訴状を提出します。原告事件番号が決まり裁判が始まります。訴額140万円以下の場合は簡易裁判所となりますが解雇無効を争う場合は地方裁判所になります。
第1回口頭弁論まで
裁判所は訴状を受け付けると、第1回口頭弁論期日(こうとうべんろんきじつ)を指定して、被告に訴状の副本(ふくほん)等を裁判所が特別送達で郵送します。
これに対して被告側では、答弁書を作成して裁判所に提出し、その後の口頭弁論期日に本人または代理人(弁護士)が出席して対応するのが、通常の展開です。
訴状が被告に送達(そうたつ)できない(届かない)場合、訴状を受け取った被告が答弁書を提出せず、第1回口頭弁論にも出席しない場合があります。これらの場合、被告側には不利な結果になります。
第1回口頭弁論
裁判官が法廷で原告・被告双方から、直接、口頭による弁論を聴く手続を「口頭弁論」といいます。なお、刑事裁判では、法廷での審理を「公判(こうはん)」といい、民事事件と刑事事件では法廷で審理をする際の期日の呼び方がそれぞれ「口頭弁論期日」、「公判期日」と異なっています。
第1回口頭弁論期日では、裁判官が原告代理人に対し、「訴状を陳述しますね」などと質問し、原告代理人が「陳述します」などと述べます。このやりとりによって、裁判所に対して、原告が訴状の内容を法廷で述べたこと(口頭弁論)になります。民事裁判では、当事者の主張は法廷において口頭で陳述されたものだけを判決の基礎とすることができることになっている(口頭主義)ので、原告は裁判所に訴状を提出するだけで足りず、訴状の内容を陳述する必要があるのです。
被告が答弁書を事前に裁判所に提出している場合には、仮に被告が第1回口頭弁論期日を欠席していたとしても、被告は答弁書の内容を陳述したものと扱います。これを「陳述擬制(ちんじゅつぎせい)」といいます。第1回口頭弁論期日を決めるにあたっては原告の都合だけで決め、裁判所は被告に一方的に期日を指定します。そのため、被告の都合が悪く第1回口頭弁論期日を欠席せざるをえなくても、答弁書を提出すれば陳述擬制を認め、以後、審理を進めることができるようにしたのです。なお、陳述擬制は基本的に第1回口頭弁論期日だけに認められています。
主張整理(準備書面と書証の提出)
民事裁判では、法廷で行う口頭弁論期日に当事者の主張・立証を行い、その口頭弁論期日に行われた主張・立証から裁判所が一定の心証を持ち、それに基づいて判決を行うのが基本です。
主張・立証は、まずそれぞれの当事者が請求(基本的には原告の請求)が認められるかどうかに影響するような法律構成とその要件となる事実を主張して、どの事実に争いがありどの事実が認められれば請求が認められたり認められなかったりするかの枠組みを明らかにします。このことあるいはこの段階を裁判業界では「主張整理(しゅちょうせいり)」といいます。
和解
民事裁判では、裁判所から当事者に和解は可能かという質問が随時あります。話し合いで和解する可能性があると裁判所が判断すれば、「弁論準備期日(べんろんじゅんびきじつ)」で和解の話し合いも進められたり、はっきりと「和解期日(わかいきじつ)」が指定され裁判所が間に入って和解の話が進められることになります。
人証調べ(証人尋問と本人尋問)
主張整理が終わって、その段階でも和解ができそうになく判決を出す必要があると、証人尋問・当事者本人尋問の「人証調べ(にんしょうしらべ)」を行います。人証調べは、それまで「弁論準備期日」で進めていても、「口頭弁論期日」に戻されて、法廷で行われます。
弁論終結と判決
人証調べが終わると、通常は、当事者の主張・立証は既に尽くされているということになり、口頭弁論は終結することになります。ここで裁判所から改めて和解の勧告があることもありますし、そのまま弁論を終結して判決に進むこともあります。比較的多数の証拠が提出された事件では、弁論の終結に際して、これまでに提出された証拠・証言によって自分が主張した事実がこのように立証されているということをとりまとめて主張する「最終準備書面」を双方が提出することがあります。