人員削減の必要性
事業者側の主張・立証
人員削減の必要性が認められた判例を検討すると以下のような場合がみられます。事業者がどのような主張をしてくるのか検討してみましょう。
- 起業が倒産の危機にある場合(大村野上事件)
- 起業が客観的に高度の経営危機下にある場合(住友重機玉島製作所事件)
- 企業の合理的運営上やむを得ない必要性がある場合(東洋酸素事件)
- 経営方針の変更等により余剰人員が生じた場合(ナショナル・ウエストミンスター銀行3次仮処分事件)
判例の傾向や分析をした文献が多かったようです。
認められた事業者側の主張に対する証拠の提出は訴訟においては事業者の複数年の財務諸表の提出及び税理士・公認会計士の意見書、や証人出廷、事業計画書などです。
裁判所は事業者の主張や提出された証拠に基づいて経営状態を詳細に検討し主張が事実である場合、結論として判例の大部分は経営の専門家の判断を尊重してその要件を認める傾向にあるようです。否定される裁判例主張のみで原告が証拠の提出を求めても無い及び不十分な場合は論外で人員削減後に多数の新規採用者や大幅な賃上げ、高額な株式配当などを行うなど自らの主張に対して誰が見ても矛盾する行動を事業者が取った場合です。
労働者の主張立証上の観点から
1.事業者が倒産の危機にあること
2.事業者が客観的に高度の経営危機下にあること
を事業者側が主張してきた場合使用者側が財務諸表の提出を求め、財務諸表の項目を入念に検討して主張すべきであるが、財務諸表等について知識の無い弁護士は、いざそれが提出されると、特に検討もせず「使用者側の提出した財務諸表によれば、人員削減が必要となるほどの経営状況にないことは明らかである。」といった象徴的な主張にとどまる場合があります。このような場合には打ち合わせの際、どの点が該当するのか?など弁護士に質問し、弁護士と共に協力し入念な検討を行う必要があります。
3.不採算部門の閉鎖等事業者の合理的運営上ややむを得ない必要性
4.経営方針の変更等により余剰人員生じたが一定の収益はある場合
などの場合、使用者側は自社の都合をつらつらと主張し、労働者側も会社の主張にいちいち反論し、価値観の違いだけを主張するだけで、終始せずに客観的資料に基づいた前提事実の立証に対する反論するべきであり、証拠に評価を加えた主張が説得力を増すのです。
- はじめに 整理解雇の4要件(1)
- 人員削減の必要性 整理解雇の4要件(2)
- 解雇回避の相当性 整理解雇の4要件(3)
- 人選の合理性 整理解雇の4要件(4)
- 手続きの相当性 整理解雇の4要件(5)