証拠とはどんなもの

 証拠のいろいろ

労働問題で裁判をする場合重要になるのがが証拠です。当事者同士が単に主張しあうだけでは、裁判官はどちらの主張する事実が真実であるのか結論を導きだすことができません。事実を判断する拠り所がないからです。裁判官が法律を適用して、法的な効果を判断し具体的な判決をするためには、審理において当事者から出された事実認定のための資料を調べ過去の事実がどのようなものであったかを確認する必要があります。

 この裁判官の事実認定の拠り所となる資料が証拠です。そして、事実認定の資料を取り調べる手続きが証拠調べです。証拠調べ手続きの前に、大切な証人となる人が重病にかかれば、急いで証拠を保全しておく必要が出てくることもありますし、証拠を隠滅されないようにカルテなどを裁判提起前に確保しておく必要もあります。このあらかじめ証拠を確保しておくことを証拠保全といいます。

証拠保全手続き

証拠保全をするには、裁判所による申立てが必要です。証拠保全というのは、要するに裁判を提起して証拠調べが行われるまで待てないという意味ですから、その理由を説明しなければなりません。これを保全の必要性と言います。申立てるべき裁判所は、それぞれの段階によって次のように違ってきます。

  • 訴えの提起前は、尋問を受ける人・文書所持者の居所、検証物の所在地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所
  • 訴え提起後から口頭弁論期日指定までは証拠を使用する裁判所
  • 口頭弁論期日指定後は事件を受理した裁判所の担当部署

証拠にはどんなものがあるの?

労働問題に限らずトラブルの内容や相手方がどんな主張でどんな証拠を提出するのかわかりません。ですから一般的な証拠についてお話しします。

裁判官が証拠調べで、直接触れることができるのは「人」と「物」です。証拠には人証と物証がありこれを証拠方法といいます。この証拠方法から具体的な事実を認定する際の判断材料が得られます。これを証拠資料と言います。

1.文書

契約書・見積書・領収書・手紙など書いた人の意志などを確認する場合です。

公務員が権限に基づいて作成した文書を公文書といい、住民票や課税証明書・登記事項証明書また文書開示請求などで入手した文書などがこれに当たります。

 地図・設計図・などの図面、写真録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成されたものは文章ではありませんが情報内容を証拠とする場合は、文書に準ずるものとして証拠調べがされます。

2.検証

裁判官が、実際に見たり、触れたりするなどして、その性質や状態を感じて、その結果を証拠とする場合です。現場の状況、たとえば通路妨害の状況とか境界石の位置の状況を見たり、また、いろいろな現象などを実際に見たりするのも検証です。

3.鑑定

 建物や道路に欠陥があるかどうか、医師に投薬や手術上のミスがなかったか?そ土地や建物の価値はいくらぐらいかなどは、裁判官が自分の知識や経験だけで自信を持って判断できません。特別な学識経験を必要とする事柄だからです。

 鑑定は、特別な学識経験を必要とする事項について、その筋の専門家に調査を依頼し、その報告・意見を求めるものです。裁判官は鑑定人から出される鑑定意見を一つの判断材料としての事実の認定をします。

4.証人尋問

契約交渉の立ち合いをした人や偶然に事実を目撃した人など、当事者以外の第三者に過去の事実・状態について証言を求めます。

5.当事者本人尋問

 事件の一番の関係者ですから、第三者よりも信用性が薄いといえますが、事件の事を最も知る人の供述として証拠資料上重要といえます。