証拠の中で一番重要な書証を集める

 文書は裁判で最も大切な証拠

 労働裁判でちょくちょく出てくるのが労働者性のです。これを例に書証の話をします。いわゆる労働者なのか?会社の取締役なのか?請負なのか?の問題です。

 あなたが解雇無効を裁判所に訴えたときにあなたが労働者なのか?ということなのですが、労働基準法や労働契約法などの法律は労働契約において労務を提供する側の保護を目的として、契約内容の決定の自由等を一部修正し、当事者間の法律関係に強行的に行政や司法が介入する効力を有するのであり、立法上の規定や判例法理等に基づいて請求を行う当事者はまず請求の原因として、自身が当該立法等の適用対象である「労働者」であることを主張立証する必要があります。仮に原告の証拠が複数月の給与明細を提出しているとします。原告が労働者であることについての主張に対して被告の抗弁が無い場合や裁判上の自白をした場合には証明は不要ですが、原告との契約が取締役であるとか請け負い契約であるなど労働契約自体を否認した場合は証明が必要となります。使用者が取締役である証拠や原告と被告が取り交わした請負契約書などを提出した場合などは勝敗を大きく左右することになります。その理由を検討してみます。

文書は誰かが作る

 文章は自然に生まれ出るものではありません。必ず作成した人がいます。請負契約書の場合は発注した、請け負った両者が作成者になります。

 被告は原告と被告が作成したものだとして提出します。

文書の真正

 原告と被告が本当に作成したものであるときこれを「文書の成立が真正である」といいまた、原告が提出した給与明細は被告が作成して原告に交付したものであれば上記と同様で、裁判所に証拠として採用してもらう事ができます。

 では、どちらの証拠が有利・不利かというとそう簡単ではありません。裁判官の心証にどれだけ影響を与えるかという点が問題で、それをどう判断するかは裁判官の自由な心証に任されているからです。

 請負契約書の署名捺印が本人のものではないとの原告の主張の場合は鑑定が必要な場合もあるし、また、原告の錯誤で署名捺印してしまった場合もある。請負契約であるならば請求書と領収書の存在が問題になり、被告がその代用として給与明細書を発行した。との抗弁もありえるので請負契約書や給与明細が強力な書証ではあるが、どのように判断されるかは裁判官の心証次第です。ただ、従業員だった人を従業員じゃないと言うことは無理筋ですが働くことを前提にした労働契約以外の契約も存在するのです。

公文書と私文書

 公務員が権限に基づいて作成した文書を公文書それ以外の文書を私文書といいます。

 私文書は、本人の署名または押印があって初めて真正な文書と推定されますが、公文書は正規のものであれば、それだけで真正な文書と推定されるという違いがあります。

処分証書と報告証書

 労働契約書・就業規則など賃金額や支払い方法・解雇基準など法律行為が書かれている文書を、権利義務を処分するという意味で処分証書といいます。権利義務を処分するというようなものではなく日記・給与明細・商業帳簿・電子メール・報告書・日報・意見書・登記事項証明などは報告証書と呼んでいます。

書証の提出

 訴訟や労働審判の場合は証拠と呼び、仮処分の場合は疎明資料と呼びま す。提出する際は証拠説明書に番号・作成日・作成者・立証趣旨等を記載し裁判所に提出します。証拠を提出してその証拠をもとに主張を組立たてたほうがより裁判官に有利な心証を与えることになります。